日本人の心理劇

これが処女作となる葛西は、事実に基づき、歴史の闇に埋もれた戦争末期、最前線の日本兵の物語を著した。

指導を誤った1944年のインド侵攻作戦で五万五千人を失う大敗北を喫した日本軍は、イギリス、インド連合軍に退路を断たれ、ビルマで窮していた。

角美久少尉は、包囲された守備隊を救出するよう下命される。これがこの心理劇の始まりだ。物語は以後、ゆっくりとワニ襲撃事件への無情の道を進む。

多くの部分は心的だ。葛西は兵士の頭、心の内側を描くことを選んでいる。

この本は著者の第二言語で書かれているが、スムーズに読める。ネイティブ・スピーカー編集者の助言を容れればよかったと思われるところが二、三あるけれども、大体は問題ない。


発表日:2007年5月2日
評者:C・オガワ氏 (日本)
於:ジャパン・ビジター

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