激戦を経、島の東海岸へ追いやられた大隊は、クリークを越える撤退行動を余儀なくされる。決行直前、同じ腐敗臭をかぎとった春日は、上官に危険を告げる。だが彼を無視した軍曹は、クリークを渡るよう兵に命じるのだった。
ラムリー島守備隊生存者救出の使命を帯び、ミンガン・クリークに到着した角美久少尉は、純然たる恐怖に直面する。
葛西は軍人を動かす力について非凡な洞察力を示す。ある者は恐れや臆病心に駆りたてられ、またある者は自尊心、愛国心、英雄主義への自己陶酔、あるいは勇気によって突き動かされる。だがすべてを支えるのは、自己保存の法則、生き残りへの渇望だ。
この本は英語で書かれているが、葛西の堂々とした精彩ある筆致は、映像を見るようで、ビルマの舞台を忠実に再現しながら、日本の潜在的文化まで理解させる力がある。
「ドラゴン・オブ・ザ・マングローブス」は第二次大戦南方戦線、またその後の紛争でのゲリラ戦に関する作品の傑作たるべく定められている。