「ドラゴン・オブ・ザ・マングローブス」は、春日稔上等兵と角美久少尉の目を通して、読者をビルマ沖、ラムリー島に連れていく。
日本の軍事に関する知識、理解に限りがあるので、正確な名称ではないかも知れないが、敵だけではなく、太古からこの地に棲むイリエワニとも向き合わなければならなかった日本の帝国軍将兵が、ここにいる。「ドラゴン・オブ・ザ・マングローブス」は、命令に従い、生き残るために奮闘する彼らの物語だ。
誰が正しく、誰が悪いといった話ではない。そういうことから離れ、失われた時代の一国の歴史を再構成する話だ。どのような考えを持とうとも、人とは誰しも、愛するものと一緒に暮らすという普遍的な願いや望みのため、努力を続けていくのだ、ということが思い起こされる。
前述の通り、世界の軍事史について限られた知識しか持ち合わせていないし、フィクション、ノンフィクションの別なく、この分野の本をたくさん読んだ訳でもない。それでも葛西泰行のこの物語は楽しむことができた。この時代の日本史を十分理解するために、また読むこともあるだろう。
軍事史に興味のある読者に、この「ドラゴン・オブ・ザ・マングローブス」をお薦めする。