大戦中の日本兵、ワニに直面する

史上最悪の獣害は1945年2月かつてのビルマ、ラムリー島の湿地でおこった、とギネス・ブックにある。千名の日本兵が世界最大最凶の爬虫類、イリエワニのコロニーに追いやられた時のことだ。

葛西泰行の調査は、徒渉のさいに非業の死を遂げた同国人が実際たくさんいたのかどうか疑わしいという結論になった。それでもこの「ドラゴン・オブ・ザ・マングローブス」の脅威は本物だ。西洋人読者として興味深いのは、この話が日本兵の観点から語られていることだ。ほとんどの第二次大戦ものでは、日本は単なる敵にすぎず、私たちと同じ感情、希望、夢を持つ生きている人間としてかえりみられることはないからだ。

著者の持つストーリー・テラーとしてのさえた感覚、技と力が、それぞれの登場人物をいきいきとさせている。この物語が光っているところだろう。おすすめる。


発表日:2009年11月10日
評者:ティモシー・ジェームス・ディーン氏 (アメリカ合衆国、アリゾナ州キングマン市)
於:アマゾン・コム

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