葛西泰行の調査は、徒渉のさいに非業の死を遂げた同国人が実際たくさんいたのかどうか疑わしいという結論になった。それでもこの「ドラゴン・オブ・ザ・マングローブス」の脅威は本物だ。西洋人読者として興味深いのは、この話が日本兵の観点から語られていることだ。ほとんどの第二次大戦ものでは、日本は単なる敵にすぎず、私たちと同じ感情、希望、夢を持つ生きている人間としてかえりみられることはないからだ。
著者の持つストーリー・テラーとしてのさえた感覚、技と力が、それぞれの登場人物をいきいきとさせている。この物語が光っているところだろう。おすすめる。