戦争末期、ビルマを失いつつあった日本軍は、沿岸の島、ラムリーからなおも反攻を試みようとしていた。それも不可能となった時ようやく、既に場違いになってしまった救出計画が立てられる。しかし守備隊にとって、マングローブの湿地を渡りながら敵の砲火を逃れるのは容易ではない。その上、腹を減らせたワニから逃れるのはさらに至難だった。
この物語は日本兵の視点から語られている。著者の高祖父は最初に来日した合衆国艦隊に対する沿岸警備に送りだされた侍のひとりだ。彼の父は戦時中、砲兵だった。これら素地の上に著者、葛西泰行は広範なリサーチを加え、この小説を書き上げた。兵士たちが何に直面し、何を感じ、どのような場所を進まなければならなかったのかが詳述されている。さらに著者は、暗く濁った水に戦友が消えていくのを見た者の恐怖を描き出している。「ドラゴン・オブ・ザ・マングローブス」は興味深く、また人を呆然とさせる物語だ。