平成五年九月二十五日 午前四時二十分
しろは安らかな顔で昇天しました
「しろ」ちゃん 十一年間 二階堂家の小さな家族でした
今日二十五日は 家族と共に一日を過ごし(通夜祭)
明日出棺 明日の夕方 帰家祭の予定です
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今しろちゃんは、妻の部屋に置いている自分のベッドで静か
に眠りに就いています。大好きだったバターのいっぱいついた
トーストが入ったちっちゃなステンレスの食器を枕元に置いて。
大好きだったお母さんの赤いブラウスを着せて貰って・・・
眠っています。お母さんは、いつもは何にも言いませんが・・
十一年間、病気ばかりしていたしろちゃんをしっかり支えてく
れました。
どんなに辛いときでも決して涙を見せないお父さんが、人の
いないところで涙をぽろぽろ流してくれているのも、知ってい
ます・・・
あっという間の十一年間でした。抱き上げて頭を撫でてやる
ことのできない子供でした。ときどき頭を撫でることができる
と、ゆっくりと、ホントにゆっくりと尻尾を二、三度左右に振
ってくれるだけの、そんな十一年でした。
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妻の部屋から出てくることも殆どなく、大きな反応を見せる
ことも殆どない子でした。トーストを食べていると、ときどき
部屋にやってきて、前肢をトントンと踏みならして催促してく
れるのが嬉しくて、つい食べさせすぎになると、直ぐ下痢をし
て妻に叱られたものです。シュウマイとトーストとさつまいも
のてんぷらの大好きな子でした。
外に出て一緒に遊んだこともない子です。事故の怪我が少し
治ってきた頃、胸の上で卵の黄身を食べさせたときと、この二、
三日、膝の上で目を閉じて眠ってくれたときぐらいしか抱き上
げることのできないしろちゃんでした。
でも、二階堂家の中で大きな存在感を持っていました。ちょ
っとした物音に驚き、うなり声をあげてものすごい形相で突っ
かかってくる。ベッドで寝ているしろちゃんの頭を撫でようと
手を伸ばすと、「ゥワン」と一声。反射的に跳び下がるのが精
一杯、それでも頭を撫でることができたときのうれしさは、言
葉では表すことができないものでした。
いつもの場所にいつものようにいるだけで・・・・・
それがしろちゃんの存在感でした・・・・・
もう苦しい思いをすることもありません。お父さんとお母さ
んの胸の中でずっと生き続けて行きます。そして、いつかまた
逢える日を信じて・・・・・
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