連日の豪雨のため五色台の野生児たちへの給餌が遅れ遅れに
なっていることが気になっているのであろう、深夜になっても
目が冴えて眠りの水車が心地よく回ってくれない。私の左側で
腕を枕に眠っている蘭ちゃんが時折軽い鼾をかく。
窓の外はごうごうという音と共に、大粒の雨が落ちてきてい
る。曲がらぬ右脚をピンと伸ばしてすやすやと眠っている蘭ち
ゃん・・・殆ど鼾などかいたことがない蘭ちゃんが鼾をかいて
いる、どうしたことであろうか。ぴったりと背中を私の脇腹に
くっつけ何一つ警戒することもなく、雨の音に目覚めることさ
えもなく深い眠りに落ちている。
ベンジャミンは身体の割に全てにわたっておとなしく、眠っ
ているときも殆ど寝息さえ立てない。深夜ふと目を覚ましてベ
ンジャミンの寝息を窺い、余りの静かさに思わず揺り起こすこ
とも度々であった。今夜も長毛のため暑いのであろう、ベッド
サイドの涼しい場所を選んで静かに眠っている。
どう表現したらいいのであろう、蘭ちゃんのこの鼾! もし
この鼾が人間の発しているものであったら、恐らく跳び起きて
頭の一つもペチンというところなのであろう。しかし今夜の蘭
ちゃんの鼾は、けっして可愛いものではないのだが、はっと目
を覚まして「何か異変が・・・」などと心臓を締め付けながら
揺り起こすときと比べれば、可愛く安心感を与えてくれるもの
であった。
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どうしても眠りに就くことができないまま、階下のコンピュー
ターを置いてある部屋に移り、なすこともなく画面を眺めなが
ら時の移るのをただじっと待つ。やっと睡魔の登場。
二階のベッドに移るため部屋を出たところ、長椅子の上で丸
まって眠っている蘭ちゃんの姿が目に入る。甘えん坊であるこ
とは自他共に認めてはいるが、いじらしささえ覚える。
私の起きた後、音も立てずに階下の隣の部屋に降りてきてい
たのである。
眠そうな目元の蘭ちゃんをしっかりと抱きしめ階段を登りベッ
ドに入る。窓の外は相変わらず激しい雨であった。先日五色台
で拾ってきたまだ名前も付けていない仔犬が、ちびちゃんと共
にすやすやと眠っている姿が頭の中でぐるぐると回り、眠りの
水車の回転と重なった。
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