台風の余波であろうか、朝から曇ったり霧雨になったりと、
もう一つはっきりしないお天気の土曜日であった。五色台の野
生児たちは、クロとコロそしてあのドロボウ顔のチビスケ君以
外には逢えなかった。生暖かい風が吹き、お腹を返して甘える
コロのお相手をしているだけで汗が流れ落ちてきた。
峠下の窪地と岬との中間点で出合ったコロも、全力疾走で車
を追いかけてきたせいだろう、大きな舌を出して荒い呼吸を繰
り返しながらも甘えることは止めようとはしなかった。
それどころか、食器に入れたパンを食べようとはせず、手か
ら与えるパンを一生懸命に食べるのであった。ひとしきりパン
を食べると、私の手を舐めたり、軽く手の先を咬んだりして気
をひこうとする。
目尻を垂らし、頭を低く構え、口を半開きにして跳びついて
くるコロと汗まみれになって暫く遊ぶ。白いポロシャツが汗と
泥でぐしゃぐしゃになっていた。
夕方からやっとホームセンターへ出掛ける。先日から気にな
っていたビーチデッキセットを購入。これでゆっくりとコーヒー
でも飲みながら二階堂軍団のわんちゃんたちと遊ぶことができ
る。
早速狭い庭の中での二階堂氏争奪戦の始まりである。珍しく
外に出てきたベンジャミンだけは、椅子に座っての観戦。先ず
ちびちゃんが椅子の正面を争奪、膝に前肢をかけて濃厚キスの
タイミングを狙う。左横からは大五郎が肩に前肢をかけ、右か
らは玲ともも。はち君はと言えば、蘭に襲いかかっている。
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ベンジャミンに突っかかり、大五郎を威嚇、二階堂家の最高
位に就いていた筈の蘭ちゃんも、小さなはち君の攻撃には為す
術もないようであった。頭といわずのしかかってゆくはち君の
縦横無尽の攻撃に対し、流石の蘭ちゃんも切り返すことができ
ないままに目をしょぼつかせている。自分より小さなものを守
ろうとする原始本能の為せる技なのか!
一番の新入りで一番小さなはち君の前を遮るものは何もない
ようであった。食餌も遊びも寝る時も、全てがはち君の思いの
ままである。膝に座り、辺りを睥睨している蘭ちゃんも、庭の
中では、はち君にドンの座を譲らないわけにはいかないのであ
ろう・・・。
お座りの姿勢のまま、隙を狙ってはペロペロと舐めにくる大
五郎・・・
絶対に自分が一番とばかり、他を押しのけてでも私の正面を
陣取るちびちゃん!
遠慮がちな仕草乍ら二階堂家で生まれ育ったことで他を何と
か圧倒している玲とももちゃん!
そしてそれらを一段高いところから静かに見ているベンジャ
ミン・・・
形容のしようのない温かさと優しさが狭い庭一杯に漂い広がっ
ていた。膝の上の蘭ちゃんが欠伸を始め、ひとしきり暴れたち
びちゃんたちも椅子の周りで長くなっている。海岸公園では月
見草が花を開きベンジャミンと蘭の来訪を待っている筈である。
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