確率五分の一の闘いが狭い庭の中で繰り広げられるのである。
乳房がパンパンに張り、頬がこけ狐のような顔をしてわが家に
やってきた桃子改めちびは、まるでこの家で生まれこの家でずっ
と育ってきましたと言わんばかりの、物おじしない態度で毎日
を過ごしている。
ごわごわだった薄茶色の体毛も、柔らかく艶のあるオフホワ
イトと薄茶に変わり、大五郎より一回り小さかった体高は変わ
らないものの、体重は十二キロと肉付きもよく、活発に走り回
っている。一番の甘えん坊でありきかん坊でもあるようだ。五
分の一の闘いを決して譲ることなく、何とか私の関心をひく場
所を確保し、先輩の玲やももを押し退けることなどは至極当た
り前のこと。両前肢を私の頚に回し、すがりついてくる様はま
さに百年の恋人の姿そのものである。
そんなきかん気のせいであろうか、最近では玲ちゃんのいじ
めの対象になっている。一回り大きな玲ちゃんが低い唸り声と
共にちびに忍び寄る。ポテンとお腹を見せて恭順の姿勢をとる
ちび。ひっくり返ったちびを跨いでなおも威嚇する玲ちゃん。
無用な抵抗はトラブルの基と心得ているうちはいいのだが、た
まに唸り返すと大変である。私以外には止められないほどの大
喧嘩に発展する。
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そんな先輩たちの行動には全くおかまいなしのマイペース、
足元にじゃれ付き、ちょっとでも隙を見せると書斎に潜り込も
うとするはち君!
ずっしりと重くなったはち君を追い回し、というより適当に
からかわれているのが妻君殿。ご主人様のいないときは最年少
者の天下とばかり庭に穴を掘り、木の葉を食いちぎり枝を折っ
て遊ぶ。
狭い庭の中を塵の山にして妻君殿の仕事を増やしているよう
である。何れ劣らぬやんちゃ坊主におてんば娘! 主人である
私に向かっては決してそのいたずらぶりを見せることはない。
椅子の周りに陣取り、特等席である膝の上を虎視眈々と狙う
だけである。缶詰を開けていても、その姿勢は変わらない。お
座りの姿勢で私の手元と目を見つめている。
縁あって二階堂家の一員となった大五郎やちびたち、それぞ
れの置かれていた環境も、育った状態も違うものの、花を愛で、
鳥を愛し、風の音を聞き人の優しさを充分に理解しているので
あろう。優しい心だけは何れ劣らず持ち続けているようである。
はちとちびが重なって居眠りを始めた。
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