不景気風を吹き飛ばしたいという身勝手な人間様の「かなわ
ぬときの神頼み」、十日戎である。取材にいったキャスターか
らおみやげとして紅白のお餅を貰った。
いつもなら誰かその辺の後輩に渡して持って帰るなどという
ことはしないのだが、今日に限って上着のポケットに大事にし
まい込む。頭の中に五色台の野生児たちと海の野生児たちのこ
とがあったからである。
自分一人の努力でなんとかなるというような生やさしい状態
ではなく、それこそ神にも仏にもすがりつきたい程の深刻かつ
哀しい日々が続いているからである。
午後八時、ベンジャミンと蘭を連れていつもの海岸公園へ出
掛ける。
昨日もそして今夜も、風もなく穏やかな冬の日が続いている。
総合体育館裏の川面も、海岸公園前の海面も、まるで鏡のよう
に静かであった。生理中の蘭ちゃんは、至る所でオシッコ爆弾!
それにつられてベンジャミンもあっちにフラフラこっちにヨ
ロヨロ、まるで前に進まない。昼過ぎから体調に異変を感じて
いたのが、橋を渡り海岸公園に着いたとき爆発する。左胸に痛
みが走りだしたのであった。それでもいつもほどの痛みではな
かったため、ベンジャミンと蘭の遊びを見守り帰り支度を始め
てからやっと舌下錠を口に含む。
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痛みはものの二分ほどで治まる。往路と同様、あっちこっち
に匂いを付けるベンジャミンと蘭につきあいながらやっと家に
たどり着く。「温かいお風呂に入ってゆっくりと手足を伸ばし、
ひろじいさんからのデーターを・・・・・」などと考えていた
ことは完全に雲散してしまう。
椅子に座って呼吸を調えるのが精一杯! それでもひろじい
さんに電話をかけて、ひとしきり毒づいてみる。少しは元気が
回復したようであった。
とはいいながら、まだ入浴できる状態ではない。妻君を拝み
倒し、缶詰とドライフードを混ぜて貰う。ケースに一杯の夜食
をトランクに積み、海の野生児たちに逢いに出掛ける。
五郎とシロが出迎えてくれた。月がないため真っ暗な路上で
の給餌となる。トランクの明かりを頼りに五郎とシロの元気な
姿を確認する。
カシラたちを探してみるが、もう何処か安全なところで眠っ
ているのであろう、鳴き声も聞こえない。自己満足だけの行動
かも知れないとは思いながらも、五郎とシロのお腹がふくれて
いるのを見るだけで、胸の痛みが消し飛んでしまう。
みんな明日も元気で・・・・・おやすみ・・・・・
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