ニュイ君への返書



5月4日 幸せを運ぶ犬たち
 短時間の五色台訪問で随分沢山のものを手に入れられた御様 
子に接し何よりのことと喜んでおります。

 雄大な自然の中で、精一杯生きている彼ら五色台の野生児た
ちが我々ちっぽけな人間に与えてくれているものの多さにあら
ためて割目し、またそれらのことに気づかれたニュイ君の優し
さと洞察力にも頭が下がる思いでいっぱいです。


   「あの権兵衛やさくら、そして太郎。彼らが氏を
    動かしている。それほど素晴らしい、そして心
    を暖めてくれる犬たちなのだ。
  
    この現実の前に直面した時、それぞれができる
    ことをするということの大事さを知る。
    そしてそれが、どれほど自分に幸せをもたらせ
    てくれることか!
    今、二階堂氏は至上の幸福感に満たされている」
  
  
  ご推察の通り、二日に一度の給餌活動によって、彼ら五色台
の野生児たちから与えられる幸福感、そして優しさと暖かさと
にふんわりと包まれた何とも表現することのできない感覚!
この不思議な感覚をどう表現すればいいのでしょうか!

 全ての表現能力を超越したまさに、言葉に出すことができな
いほどの大きなそして多くの生きて行くための優しさを教えて
くれているような気がいたします。
 「行徳のガンジー」と名付けられた「放浪犬・流転のバル」
が人々に与え続けてきた幸せを、今五色台の野生児たちは私に、
そして彼らを取り巻くニュイ君を始め多くの人々に与え続けて
います。

 そんな彼ら野生児たちの優しさと厳しさに触れることで、心
が温かくなり、清められ、明日への道を希望と信念を持って歩
むことができているように思っています。


 「人の命と野良の命とどちらが大切か」「犬と人とは同次元
なのか」などの議論がいかに不毛であるか。そして文明の発達
と生活の至便さの追求との引換に私たちが失ってきた「慈しみ
の心・思いやりの気持ち・優しさ」などを生命の危険、住居、
食糧、病など、全ての不安因子の中で失うことなく、私たちに
行動で教えてくれている五色台の野生児たち!

 私を取り巻く多くの人々に何一つお返しをすることはできな
いままに・・・野生児たちが与えてくれている優しさに何一つ
応えることができずに、私もいつか生を終えるかも知れません。

 しかし星空の中できっと彼ら野生児たちに再会し、いたらな
さを詫び、また共に草原を駆け、風に向かって歌うことがある
ことを信じて、今自分にできることを淡々と続けて行きたいと、
改めて決意致しました。