虫の知らせ



11月9日
 局の方に自宅の電話番号の問い合わせがあったという。悪戯 
電話が酷いため、電話番号を公開していないためだろう。大抵
は所属しているライオンズクラブか、何かの商品のセールスと
いうことの方が多い。

 ただ、気になることが一つだけ。岬のクロちゃんの病状であ
る。一応岬のおじいさんに自宅の電話番号は知らせていたのだ
が、その電話番号はもう使用していない。


 急いで自宅に帰り、コンピューターの住所録を検索。岬のお
じいさんの家に電話を掛ける。

 「後ろ足がフラフラして、殆ど動かないんです・・・」

 応対に出たおばあさんの返事であった。

 「よかった! まだ生きてくれている」杞憂に終わった虫の
知らせであった。

 食餌も何とかしてくれているらしい。ウィークデーは、自宅
の腕白たちのお相手もしなければならず、日没時間の影響もあ
って思うように五色台へ車を走らせることが出来ない。
 連れて帰って動物病院へ入院させなければどうしようもない
状態なのだろう。しかし、一晩をどうやってすごさせればいい
のだろう・・・。


 庭の二階堂軍団がドアの隙間からちょっと顔を覗かせるだけ
で、逆毛を立ててギャンギャンと吠えたてるわがまま娘蘭ちゃ
ん!
 
 その上クロちゃんは自分の信念を決して曲げようとはしない
かたくななワンちゃんである。勿論伝染病であることも仮定の
うちに入れなければならない! 八方ふさがりである。

 この躊躇があとで大きな後悔に結びつくこともよくわかって
いる。迷路から抜け出す名案は、ない。何とか時間を創ってク
ロちゃんを病院へ連れて行くこと、これしか方法はないのだろ
う・・・・・