明け方四時前、半年に一度という大発作に襲われ、凡そ四十
分間ほどのたうち回る。こうなるとニトロも劇的には効いてく
れない。胸骨上からの心臓マッサージを妻に命じ、高圧酸素の
吸入で何とか逃げ切る。
午後三時十分、雨足が強まる中を窪地のコロの住居に到着。
二、三度呼ぶと、窪地の横の笹薮からコロがゆっくりと出てく
る。一日中雨の中を私の来訪を待っていたのであろうか・・・
風邪の熱と発作の後遺症でふらつきながらも何とか持参の料
理を食べさせる。ミンチとカシワの炊き込みご飯に、水分の補
給を考えてスープを多めに作る。
生肉三百グラムをぺろりと平らげ、スープを一生懸命に飲む。
雨の中での点滴は無理と考えていただけに、自力での水分の摂
取に思わず顔がほころぶ。
生肉の中には当然クロラムフェニコールとジゴシンの錠剤が
仕込んである。デザートのチーズをごくんと飲み込んで食餌は
終わった。プラスティック桶の中にはまだ三食分以上は残って
いる。
口を開け口腔粘膜の色を確認、きれいなピンク色である。聴
診器を取り出すと、後ずさりをして逃げようとする。聴診の後
には必ず点滴があるのを学習したのであろう。心音も濁っては
いるが落ちついている。
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鼻も濡れ、目脂も全然付いていない。後肢の麻痺が続いてお
り、前肢もやや不自由さを感じさせる。雨のため横臥させて検
査をすることができない。十分な食欲を確認したので、これ以
上コロに嫌われることをするのをやめる。
ゆっくりとした足どりでコロが笹薮のなかに入って行く。窪
地からほんの一メートルも入らないところに密生している五十
センチほどの笹の群落の中は、雨もかからず、適度に風も通り、
絶好の住居となっていた。
コロは既に食餌の後の午睡に入る準備をしている。食餌の桶
を笹薮の中の雨のかからない場所に置いて、暫くコロの様子を
見つめる。ため息をつきながら眠りに入ろうとしていた。
雨足がだんだん強くなり、濡れた肩や背中が冷たくなるのを
感じ、コロに別れを告げる。
今日もコロは元気に頑張っていてくれた。明日もきっと元気
な顔を見せてくれるだろう。どうみてもハンサムとはいえない
コロの顔が優しいハンサムな男の子の顔に見える・・・・・
でも、なぜか哀しい・・・・・
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