良く太ったビーグル犬くらいのまだ子供のワン君たちであっ
た。捨てられて一日か二日位なのであろう、真っ黒のワン君は
すこしおどおどしていたが、甲斐犬に似たもう一頭は全身を喜
びにして跳びついてくる。ビーフ缶を開けることができないく
らいじゃれてくる。
何とかあやしながらビーフ缶を三個ずつ食べさせ、付近数カ
所にドライフードを置いて、逃げるようにして帰途についた。
バックミラーに、おとなしくお座りをして見送っている二頭
の姿が・・・・・申し訳なかった。甲斐と黒と名前をつける。
余り眠れなかった。
十六日午後十二時、昨日逢えなかった太郎と権兵衛、そして
黒と甲斐のことが頭から離れない。大急ぎでご飯と鳥肉、魚の
あらなどを炊いて貰い、パンなどを持って五色台へ急ぐ。クロ
とコロには逢えなかった。甲斐はどうしてるだろう! ゆっく
りと坂道を登り始めて百メートル、道路脇の斜面、潅木の下か
ら甲斐が昨日と同じように全身を尾にして現れる。雨に濡れて
少し汚れていた。助手席のベンジャミンがしきりに鼻を鳴らす
が、食餌を与えるのが精一杯。元気でいてくれた。
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昨日と同じで食餌を与えることしかできない。尾を振りなが
ら車を見送っている姿がいじらしい。きっと飼い主が迎えにく
るのを待っているのだろう。
いつもの場所に太郎だけがいなかった。胡桃と権兵衛はベン
ジャミンにまとわりついて甘えている。芝生広場を三頭と共に
一周して太郎の帰りを待つ。仔犬たちもしっかり食餌をしてく
れる。小さな歯がぎっしりと生えていた。
まだ生後三十六日位しか経っていないのに実にしっかりして
いる。太郎は帰ってこなかった。新しい食餌を用意し胡桃たち
に別れを告げる。
帰途、甲斐にも逢えなかった。心が重い・・・
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