MY NATURE FRIENDS OF GOSHIKIDAI
花 吹 雪



4月12日
 午後二時半からいつも通り五色台の野生児たちに逢いに行く。
お土産はビーフ缶とドライフード。風が少々冷たかったものの、
給餌には丁度いいくらいの気温であった。

 先ず山裾のコロ・クロ・茶たちから食餌を届ける。クロは鼻
をキュンキュン鳴らして長毛で覆われた尻尾を振る。コロは両
手を交互に頭の上から差し出す独特の「お手」のポーズで喜び
と感謝を示してくれる。

 桜並木が風に吹かれて雪のような白い花びらを海の方へ、山
の方へとまき散らしていた。縁石に腰掛けてコロたちと暫く遊
ぶ。クロは少し離れたところから私を見つめながら尻尾を盛ん
に振ってくれていた。

 私の右側に座って、手をなめたり時折歯を軽く立ててきて優
しく遊びにと誘うコロ! 両手を持って座らせてみても、逃げ
たり嫌がったりはしなくなっていた。

 有料道路を入り、太郎たちの住居へ。カーブを曲がった途端、
太郎と権兵衛そしてさくらが途中まで出迎えにきてくれていた。

 太郎独特の跳び上がりながら頭を下げる歓迎の挨拶に、野生
児たちの顔を見るまでいつもつきまとう「今日も元気でいるだ
ろうか?」という不安と緊張がすうーっと消えて行く。
 さくらはかなり空腹のようであった。太郎と並んで食餌を始
める。権兵衛はいつも通り、少し離れたところからじっと見て
いる。いなくなった胡桃とそっくりの顔をしている。左目が右
目より少し小さく、耳がピンと立っている。里親のところにも
らわれて行った「くるみ」も同じ目をしていた。ただ「くるみ」
の耳は父親の太郎譲りなのか、真ん中から綺麗に折れていた。

 食餌を終えた三頭が、原っぱに寝転がって満足そうに私を見
つめている。去年の六月に初めて逢った時と変わらない光景が
そこにあった。ただ胡桃がいなくなっていることを除いては・・

 午後四時半過ぎ、「太郎、またくるから・・・」の挨拶と共
に帰路につく。角を曲がって車が見えなくなるまで、太郎が静
かに見送ってくれていた。

 いつも通りの静かな会話と生きていることの喜びを噛みしめ
た一刻であった。早い山の夕日が、散り始めた桜の花を茜色に
染めていた。