八 頭 目


6月20日 日曜日 快晴
 昨日来高したニュイ君と明け方まで話し込んだせいか、十時 
半過ぎに起床。午前中を私のパソコンの整備で費やし、午後三
時半、昨日逢えなかった太郎たち一家のことがどうにも気掛か
りであり、ニュイ君の帰神を夕方に延ばしてもらい、五色台へ
向かう。

 自然科学館横の駐車場に置いていた食餌が手付かずのまま残
っていた。当てもなく付近をニュイ君と共に歩きながら探して
みたものの、太郎たち一家が現れる気配はなかった。

 峠下のコロと茶に給餌、岬のクロを訪ねる。元気に駆け寄っ
てきてくれる。昨日の食餌がまだ少し残ってはいたものの、新
しい犬缶をニュイ君に開けてもらい嬉しそうに食べる。

 冷たい飲み物を自動販売機のところまで買いにいったニュイ
君が手招きをして呼ぶ。何かしら異常な声が山の中から聞こえ
ていた。

 付近にいた人たちも聞き耳を立てていたが、どうやら雉のよ
うだということで再び太郎たち一家のことを尋ねるため有料道
路に向かう。

 料金所の係官に太郎たちのことを尋ねるが、保健所関係が入
山した様子はないようであった。念のためもう一度自然科学館
横迄車を走らせてみるが、太郎たちはやはり不在であった。
明日もう一度きてみることにする。


 山を下りながら、ニュイ君がどうしても先刻の啼き声が気に
なるというので、岬のクロのところにもう一度車を止め付近を
探してみる。
 道路から三メートルばかり入った薮の中で、がんじがらめに
なって助けを求めている生後四十日ぐらいの雑種の仔犬を発見。
ニュイ君に無理矢理茨でガードされた殆ど人間の入ることので
きないような茂みの中に入ってもらい、何とか救出に成功。

 ただニュイ君が傷だらけになったことと、アレルギー症の私
の全身がカユクなった以外は大成功の救出劇であった。

 運良く自動販売機で売られいたパック牛乳をゴクゴクと飲み
終えた仔犬君、ニュイ君の太い腕の中に抱かれて、半分居眠り
をしながら高松駅まで無事到着。ニュイ君を見送ってから二階
堂家へ!

 八頭目の新入りである。既に飼育能力をはるかに超えてしま
っている。岬で棄てられていたちびちゃんに抱かれておとなし
く眠っている。
成犬「はち」