もう十年にもなるのだろうか! ポリバケツ一杯の炊き立て
のご飯を埋め立て地の貯木場へ運んだのは。深夜湯気のまだ出
ているご飯を、チビと名付けた母犬と共に材木の下に掘られた
住居から出てきて、膨らんだお腹が地面に擦れるぐらい懸命に
食べてくれた仔犬たちとの哀しい闘いの始まりの日。
殆ど連日、周辺の人々からは恐いと言われていた貯木場の野
良君たちに仕事以上の義務感と哀しみを胸に、妻をせきたてて
炊いてもらったご飯を運ぶことになった。
三十キロ近くあろうかと思われるほどの大きさでいかにも獰
猛な顔のオオボス、そのオオボスにいつも従っている二十キロ
くらいのチビボス、そしてその家族であろうチビとその子供た
ち。大きな図体でちょこんと座り、おずおずと左手を出してお
手をするオオボスの姿からは、どうして恐れられているのか理
解することはできなかった。
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