どうして今まで気がつかなかったのだろう! 峠下の窪地で
給餌しているとき、いつも「ゥワンワン」と言って食餌を催促
していた仔犬がいた。
口の周りが真っ黒でいわゆる泥棒顔! 胡桃と太郎の子供で
ある大五郎と殆ど同じ時期に産まれた茶とコロの子供が四頭、
窪地で生活していた。
その内の一頭は車に跳ねられたのであろう、道端で冷たくなっ
ていたのを土手に埋葬した。残った三頭の内の一頭がゴロ君!
間もなく一歳齢を迎えるであろうゴロ君、確かに大きくなって
いる。
岬のコロと同じか、少し体長が長いぐらいの大きさである。
顔はコロにそっくり、体型も殆ど違わない、勿論毛色も!
いつも耳にしたエンジンの音も覚えているであろうし、匂いも
記憶に残っているはずである。
茶と名無しが山裾の窪地から山上の駐車場近くまで登ってき
ていたのにも二回ほど遭遇している。ゴロが巣別れをして山上
の一角に棲みついていたとしても、何の不思議もないことでは
ないか・・・・・・・・・
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岬と山上そして窪地を結ぶトライアングル! その三角形の
中でゴロは生きていたのである。前回ゴロに逢ったとき連れて
いた胡桃そっくりのワンちゃん! ひょっとして胡桃の母親の
みるくの子供ではないだろうかと考えていたが、あながち希望
的想像と簡単に言い切ってしまえないようにも思える。
不思議な糸で結ばれているのであろうか! 岬を頂点とする
ほぼ二等辺三角形の中に全ての謎を解く鍵が埋め込まれている。
ゴロが食餌を催促したことも、きちんと前肢を揃え見送って
くれたことも、全て理解の範囲に入ってくる。コロとゴロが瓜
二つであることも、ゴロの目元が何となく寂しそうなのも当然
のことである。
いつも何か哀しそうな目で見つめていた茶の子供がゴロちゃ
んであるならば・・・・・
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