海岸公園からさらに五百メートルほど東に進んだ所、そこは
二万平方メートルほどの広さの草地であった。春から初夏にか
けてはカラスノエンドウを始め実にいろいろな雑草が生い茂り、
その雑草をかき分けながら四葉のクロバーを探したものであっ
た。
多いときには一時間で三十枚以上を探し出すこともできた。
夏の夕暮れ時には、蚊に刺されながらベンジャミンと夕日を眺
めたりもした。絶好の散歩コースであり、ベンジャミンの運動
場でもあったその広場には「高松テルサ」という立派なイベン
トホールを備えた斬新なデザインのビルが建ち、夜遅くまで車
が出入りしている。
六甲山に霧氷の華が咲き、札幌が真冬日の雪時雨に見舞われ
たというニュースのあと、完全防寒の装備でベンジャミンと蘭
の散歩に出かける。
先日来北斗七星が探し出せず、冷え込みが厳しい今夜こそは
何とか見つけてみようと、川沿いの遊歩道で先ず自転車を止め
ベンジャミンを放す。
いつものオリオンが雲の中に隠れてみることができない。首
をねじ曲げられるだけねじ曲げて上空の星の群を探す。街の灯
火が空に反射して輝きが鈍い。意地も手伝ってくれたのであろ
う、北斗七星も北極星もちゃんと探し出すことができる。
深々と冷え込んでいる冬の空も、見る角度によっては地上の
灯火が邪魔をして星たちの澄んだきらめきを眺めることができ
ないようである。
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寒さはベンジャミンの大好物! 走る早さがいつもと違う。
海岸公園を通りすぎ、五百メートルはあるであろう「屋島大橋」
を渡って草地であった場所のお向かいにあるサッカーコートに
到着。
二面のサッカーコートを借り切ってのベンジャミンと蘭の夜
の運動会が始まる。あの短い脚で良くもあれだけ身軽に走るこ
とができるものである。追い啼きをしながらベンジャミンのあ
とを蘭が追いかける。
濃紺の夜空に白い雲が湧き、輝いている星たちを隠し始める。
空が低く感じられる。オリオンも雲に隠れた。頬に当たる風は
冷たく、川面では数百羽の水鳥が早い眠りについていた。
白い息を吐きながらベンジャミンと蘭が足下に帰ってくる。
「ベン! あそこに友達の太郎や胡桃たちがいるよ!」
きちんとお座りをしたベンジャミンが南の星空を見上げ、何
も解っていないのであろう蘭ちゃんがべったりとベンジャミン
にくっついて、曲がらない右脚を伸ばしたまま座っている。
風が通り抜けた・・・・・
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