−昭和二十五年八月二六日法律第二四七号−
第一章 総 則 |
第一条 |
目 的 |
この法律は、狂犬病の発生を予防し、そのまん延を防止し、及び
これを撲滅することにより、公衆衛生の向上及び其の福祉の増進
を図ることを目的とする
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第二条 |
適 用 範 囲 |
この法律は、動物の狂犬病のうち、犬の狂犬病に限りこれを
適用する。但し、厚生大臣は、犬.牛、馬、めん羊、山羊、
豚、鶏及びあひる以外の動物について狂犬病が発生して公衆
衛生に重大な影響があると認めるときは、動物の種類、期間
及び地域を指定してこの法律の一部を準用することができる
この場合において、その期間は、一年をこえることができな
い
二 都道府県知事は、当該都道府県内の地域について、前項但書
の規定によりこの法律の一部を準用する必要があると認める
ときは、厚生省令の定めるところにより、その旨を厚生大臣
に報告しなければならない
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第三条 |
狂犬病予防員 |
都道府県知事は、当該都道府県の職員で獣医師であるものの
うちから狂犬病予防員(以下「予防員」という)を任命しな
ければならない
二 予防員は、その事務に従事するときは、その身分を示す証票
を携帯し、関係人の求めにより、これを呈示しなければなら
ない
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第二章 通常措置 |
第四条 |
登 録 |
犬の所有者は、厚生省令の定めるとこるにより毎年一回その
犬の所在地を管轄する都道府県知事に市町村長(都の区の存
する区域にあっては区長とする。以下同じ)を経て犬の登録
を申請しなければならない
二 都道府県知事は、前項の登録の申請があったときは、原簿に
登録し、その犬の所有者にいぬの鑑札を前項の市町村長を経
て交付しなければならない
三 犬の所有者は、前項の鑑札をその犬に着けておかなければな
らない
四 都道府県知事は、犬の登録について、一頭につき一年
二一00円以内の手数料を徴収することができる
五 前四項に定めるものの外、犬の登録及び鑑札の交付に関して
必要な事項は、政令で定める
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第五条 |
予 防 注 射 |
犬の所有者(所有者以外の者が管理する場合には、その者
以下同じ)は、その犬について、厚生省令の定めるところに
より、狂犬病の予防注射を六箇月ごとに受けさせなければな
らない
二 都道府県知事は、政令の定めるところにより、前項の予防注
射を受けた犬の所有者に注射済票を交付しなければならない
三 犬の所有者は、前項の注射済票をその犬に着けておかなけれ
ばならない
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第六条 |
抑 留 |
予防員は、第四条に規定する登録を受けず、若しくは鑑札を
着けず、又は第五条に規定する予防注射を受けず、若しくは
注射済票を着けていない犬があると認めたときは、これを抑
留しなければならない
二 予防員は、前項の抑留を行うため、あらかじめ、都道府県知
事が指定した捕獲人を使用して、その犬を捕獲することがで
きる
三 予防員は、捕獲しようとして追跡中の犬がその所有者又はそ
の他の者の土地、建物又は船車内に入った場合において、こ
れを捕獲するためやむを得ないと認めるときは、合理的に必
要と判断される限度において、その場所(人の住居を除く)
に立ち入ることができる。但し、その場所の看守者又はこれ
に代わるべきものが拒んだときはこの限りではない
四 何人も、正当な理由がなく、前項の立入を拒んではならない
五 第三項の規定は、当該追跡中の犬が人又は家畜をかんだ犬で
ある場合を除き、都道府県知事が特に必要と認めて指定した
期間及び区域に限り適用する
六 第二項の捕獲人が犬の捕獲に従事するときは、第三条第二項
の規定を準用する
七 予防員は、第一項の規定により犬を抑留したときは、所有者
の知れているものについてはその所有者にこれを引き取るべ
き旨を通知し、所有者の知れていないものについてはその犬
を捕獲した場所を管轄する市町村長にその旨を通知しなけれ
ばならない
八 市町村長は、前項の規定による通知を受けたときは、その旨
を二日間公示しなければならない
九 第七項の通知を受け取った後又は前項の公示期間満了の後一
日以内に所有者がその犬を引き取らないときは、予防員は、
政令の定めるところにより、これを処分することができる。
但し、やむを得ない事由によりこの期間内に引き取ることが
できない所有者が、その旨及び相当の期間内に引き取るべき
旨を申し出たときは、その申し出た期間が経過するまでは、
処分することができない
十 前項の場合において、都道府県は、その処分によって損害を
受けた所有者に通常生ずべき損害を補償する
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第七条 |
輸出入検疫 |
何人も、検疫を受けた犬でなければ輸出し、又は輸入しては
ならない
二 前項の検疫に関する事務は、農林水産大臣の所轄とし、その
検疫に関する事項は、農林水産省令でこれを定める
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第三章 狂犬病発生時の措置 |
第八条 |
届 出 義 務 |
狂犬病にかかった犬若しくは狂犬病にかかった疑のある犬又
はこれらの犬にかまれた犬については、これを診断し、又は
その死体を検案した獣医師は、厚生省令の定めるところによ
り、直ちに、その犬の所在地を管轄する保健所長にその旨を
届け出なければならない。但し、獣医師の診断又は検案を受
けない場合においては、その犬の所有者がこれをしなければ
ならない
二 保健所長は、前項の届出があったときは、政令の定めるとこ
ろにより、直ちに、その旨を都道府県知事に報告しなければ
ならない
三 都道府県知事は、前項の報告を受けたときは、厚生大臣に報
告し、且つ、隣接都道府県知事に通報しなければならない
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第九条 |
隔 離 義 務 |
前条第一項の犬を診断した獣医師又はその所有者は、直ちに
その犬を隔難しなければならない。但し、人命に危険があっ
て緊急やむをえないときは、殺すことをさまたげない
二 予防員は、前項の隔離について必要な指示をすることができ
る
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第十〇条 |
公示及びけい留命令等 |
都道府県知事は、狂犬病(狂犬病の疑似性を含む。以下この章か
ら第五章まで同じ。)が発生したと認めたときは、直ちに、その
旨を公示し、区域及び期間を定めて、その区域内のすべての犬に
口輪をかけ、又はこれをけい留することを命じなければならない
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第十一条 |
殺 害 禁 止 |
第九条第一項の規定により隔離された犬は、予防員の許可を受け
なければこれを殺してはならない
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第十二条 |
死体の引渡 |
第八条第一項に規定する犬が死んだ場合には、その所有者は、そ
の死体を検査又は解剖のため予防員に引き渡さなければならない
但し、予防員が許可した場合又はその引き取りを必要としない場
合は、この限りではない
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第十三条 |
検診及び予防注射 |
都道府県知事は、狂犬病が発生した場合において、そのまん延の
防止及び撲滅のため必要と認めるときは、期間及び区域を定めて
予防員をして犬の一せい検診をさせ、又は臨時の予防注射を行わ
せることができる
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第一四条 |
病性鑑定のための措置 |
予防員は、政令の定めるところにより、病性鑑定のため必要
があるときは、都道府県知事の許可を受けて、犬の死体を解
剖し又は解剖のため狂犬病にかかった犬を殺すことができる
二 前項の場合においては、第六条第一〇項の規定を準用する
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第一五条 |
移動の制限 |
都道府県知事は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため必要と認
めるときは、期間及び区域を定めて、犬又はその死体の当該都道
府県内への移入又は当該都道府県外への移出を禁止し、又は制限
することができる
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第一六条 |
交通のしゃ断又は制限 |
都道府県知事は、狂犬病が発生した場合において緊急の必要があ
ると認めるときは、厚生省令の定めるところにより、期間を定め
て、狂犬病にかかった犬の所在の場所及びその附近の交通をしゃ
断し、又は制限することができる。但し、その期間は、七二時間
をこえることができない
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第一七条 |
集合施設の禁止 |
都道府県知事は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため必要と認
めるときは、犬の展覧会その他の集合施設の禁止を命ずることが
できる
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第一八条 |
けい留されていない犬の抑留 |
都道府県知事は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため必要
と認めるときは、予防員をして第一〇条の規定によるけい留
の命令が発せられているにかかわらずけい留されていない犬
を抑留させることができる
二 前項の場合には第六条第二項から第一〇項までの規定を準用
する
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第一八条の二 |
けい留されていない犬の薬殺 |
都道府県知事は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため緊急
の必要がある場合において、前条第一項の規定による抑留を
行うについて著しく困難な事情があると認めるときは、区域
及び期間を定めて、予防員をして第一〇条の規定によるけい
留の命令が発せられているにかかわらヂけい留されていない
犬を薬殺させることができる。この場合において、都道府県
知事は、人又は他の家畜に被害を及ぼさないように、当該区
域及びその近傍の住民に対して、けい留されていない犬を薬
殺する旨を周知させなければならない
二 前項の規定による薬殺及び住民に帯する周知の方法は政令で
定める
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第一九条 |
厚生大臣の実施命令 |
厚生大臣は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため必要と認める
ときは、区域及び期間を限り、都道府県知事に第一三条及び
第一五条から前条までの規定による措置の実務を命ずることがで
きる
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第四章 補 則 |
第二〇条 |
公務員等の協力 |
公衆衛生又は治安維持の職務にたずさわる公務員及び獣医師は、
狂犬病予防のため、予防員から協力を求められたときは、これを
拒んではならない
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第二一条 |
抑留所の設置 |
都道府県知事は、第六条及び第一八条の規定により抑留した犬を
収容するため、当該都道府県内に犬の抑留所を設け、予防員にこ
れを管理させなければならない
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第二二条 |
手数料の費途 |
第四条第四項の規定により徴収された手数料は、すべてこの法律
の目的達成のために用いられなければならない
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第二三条 |
費用負担区分 |
この法律の規定の実施に要する費用は、左に掲げるものを除き、
都道府県の負担とする
第一 国の負担する費用
第七条の規定による輸出入検疫に要する費用(輸出入検疫
中の犬の飼養管理費を除く)
第二 犬の所有者の負担する費用
一 第四条の規定による登録の手続に要する費用
二 第五条及び第一三条の規定による犬の予防注射の費用
三 第六条及び第一八条の規定による犬の抑留中の飼養管理費
及びその返還に要する費用
四 第七条の規定による輪出入検疫中の犬の飼養管理費
五 第八条の規定による届出に要する費用
六 第九条の規定による隔離及び指示により行った処置に要し
た費用
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第二四条 |
処分等の行為の承
継人に対する効力 |
この法律又はこの法律に基づく命令の規定による処分及び手続そ
の他の行為は、当該行為の目的である犬について所有権その他の
権利を有する者の承継人に対しても、またその効力を有する
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第二五条 |
政令で定める市 |
この法律中「都道府県」又は「都道府県知事」とあるのは、保健
所法(昭和二二年法律第一〇一号)第一条の規定に基く政令で定
める市については、「市」又は「市長」と読み替えるものとする
但し、第八条第二項及び第三項の規定については、この限りでな
い
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第二五条の二 |
再審査請求 |
前条の規定により保健所法第一条の規定に基づく政令で定める市
の長が行なう処分についての審査請求の裁決に不服がある者は、
厚生大臣に対して再審請求をすることができる
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第五章 罰 則 |
第二六条 |
五万円以下の罰金 |
左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第七条の規定に違反して検疫を受けない犬(第二条の規定に
より準用した場合における動物を含む。以下この章同じ)
を輸出し、又は輸入した者
二 第八条第一項の規定に違反して犬についての届出をしなかっ
た者
三 第九条第一項の規定に違反した犬を隔離しなかった者
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第二七条 |
三万円以下の罰金 |
左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する
一 第四条の規定に違反して犬の登録の申請をせず、又は鑑札を
着けなかった者
二 第五条の規定に違反して犬に予防注射を受けさせず、又は注
射済票を着けなかった者
三 第九条第二項に規定する犬の隔離についての指示に従わな
かった者
四 第一〇条に規定する犬に口輪をかけ、又はこれをけい留する
命令に従わなかった者
五 第一一条の規定に違反して犬を殺した者
六 第一二条の規定に違反して犬の死体を引き渡さなかった者
七 第一三条に規定する犬の検診又は、予防注射を受けさせな
かった者
八 第一五条に規定する犬又はその死体の移動、移入又は移出の
禁止又は制限に従わなかった者
九 第一六条に規定する犬の狂犬病のための交通のしゃ断又は制
限に従わなかった者
十 第一七条に規定する犬の集合施設の禁止の命令に従わなかっ
た者
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第二八条 |
拘留又は科料 |
第一八条第二項において準用する第六条第四項の規定に違反した
者は、拘留又は科料に処する
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狂犬病予防法改正 1995年4月1日施行 |
毎年1回義務づけられていた飼い犬登録が一生に一回に変更され
る。しかし狂犬病の予防注射は従来通り毎年1回必要
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