ショック 犬・猫


概    略

急激に生じた末梢循環不全によって、全身の臓器や組織に十分な酸素が供給されず細胞の代謝
障害(酸素および栄養素の欠乏、代謝老廃物の蓄積)を来した状態をいう。この代謝障害はさ
らに循環障害を強める。適切な治療によって、この悪循環を絶たねば死に至る
原    因

ショックの原因は単一でなく複合していることが多い。しかし一般には主原因によって次の4
型に分類されている

  1)体液喪失性ショック

  2)心原性ショック

  3)血管原性ショック

  4)神経原性ショック

どの種類のショックも原因は多岐にわたり、また同じ原因が異なるタイプのショックを起こす
こともある
症    状

1.意識レベルの低下

  脳の低酸素症やアシドーシスに由来する。重症例では散瞳をみることがある

2.頻 脈

  交感神経−副腎系の反応による

3.低血圧

  小動脈では触知できないほど弱く細い脈が臨床的な表現である。末梢循環が減少するため、
  毛細血管再充満時間は延長する(正常は2秒以内)
  可視粘膜は蒼白で、かつ冷感と湿潤感がある

4.低体温

  必発性ではないが、末梢血管収縮による四肢の冷感

5.過呼吸

  疼痛および興奮によるもののほか、低酸素症、アシドーシスおよび低血圧に由来する場合
  もある

6.乏尿または無尿

  血圧がかなり低下し、糸球体濾過速度の減少が生じたときにみられる
治    療

1.補  液

  1)全血、血漿および代用血漿

    出血や循環血漿の喪失によるショックのみならず、体液の喪失を伴わないショックの
    場合も補液は極めて重要な治療手段である
    目的は失った体液を補充し循環を回復させること、および体液の喪失はなくとも有効
    循環血液量の減少があるので、それを補って心排出量を増加させることにある
    補液剤としては全血、血漿および代用血漿がよい

  2)電解質液

    大量の電解質液の投与は血液を希釈し、酸素運搬能を減少させるからよくないという
    説もある。しかし一方では血液粘稠度を減少させ、循環量を増大させるというメリッ
    トもある
    前者のデメリットより後者のメリットの方が大きいと主張する人もいる。いずれにせ
    よ、電解質の投与に際してはHtが30%以下、 ヘモグロビン濃度が7g/100ml以下
    にならないようにすべきである

2.酸素療法

3.コルチコステロイド療法

    水溶性グルココルチコイド5〜20rを1日1〜4回、静注または輸液剤に混合点滴
    投与する
    本剤の作用機序として、心筋収縮力の増大、血管拡張、乳酸代謝の促進、交感神経遮
    断、ライソゾームおよび細胞膜の安定化および抗毒素効果などがあげられている
用    語

アシドーシス(ACIDOSIS)

  酸血症   血液が酸性化した状態

  Ht= Hct (HEMATOCRIT)

  ヘマトクリット  全血液中で赤血球の占める容積比

           男     42〜45%
           女     38〜42%
           幼児    35〜40%

           犬
           平均値   45%
           正常値   37〜55%