第二次世界大戦も末期に入り、敗色濃厚となったビルマ戦線。第二十八軍が展開するアラカン地方は、連合軍の全面反攻を受け、その防衛線は各地で瓦解を始めていた。
一方、大陸側では、捜索連隊軽装甲車隊少尉、角美久に突然の師団命令が下る。少人数の挺身隊を組織してラムリー島に渡り、窮地に陥った守備隊員を救出せよ、というのだ。角は、危険な任務を与えられ当惑する。
ベンガルの要衝ラムリー島も、昭和二十年一月、英印第二十六師団の上陸作戦に直面し、一個大隊の戦力に過ぎない現地守備隊は、怒濤のような猛攻に圧倒され、危機にひんしていた。
機関銃射手、春日稔上等兵は、ラムリー島北部三五三高地で猛爆の洗礼を受ける。引き続き繰り広げられたオンドーの戦いに参加した春日は、果敢に闘おうとするが、火力に勝る敵の前に、なすすべはなく、分隊長、富田啓一軍曹等と共に敗走を余儀なくされる。
続く前田山決戦で敵戦車部隊と衝突し、一敗地にまみれた富田分隊は、ほぼ全滅の憂き目を見る。あてのない彷徨を続けた春日たち生存者がようやく本隊に合流できたころ、ラムリー守備隊は、マングローブにおおわれた東海岸に追い詰められ、ミンガン・クリークを泳ぎ渡り大陸へ転進するよう命を受けていた。
だが大陸と島を分かつ塩水クリークは、すべて敵砲艦が哨戒するところとなっていた。そればかりではない。そこには獰猛なイリエワニが生息していた。ここまでどうにか生き残ってきた春日は、鰐の存在に気付き、その恐ろしさを認識するが、彼の警告に耳を貸す者はなく、部隊は命令通り渡河作戦を敢行するため、マングローブに突入する。
部下の清水広吉軍曹、ビルマ国民軍兵士ポンジー等を率い、取りかかってはみたものの、島は敵の重囲下にあり、救出作戦は難航を極める。漁船を入手し、どうにか西海岸のウガに潜入するが、このころ敵はほぼ全島を手中に収めていた。角挺身隊はそんな中、一路守備隊が集結している東海岸を目指す。
恋人を内地に残して出征した角は、作戦の成否よりも自らの安全な帰還に常に力点を置いていた。過酷な状況にあえぎながらも、より平易な道を模索し続ける。だが島特有の地勢が災いし、行軍ははかどらない。重ねて清水との確執が角を悩ませる。跳梁する敵は容赦なく進路を妨げ、部下の命を奪う。何とかして渡河作戦決行前に守備隊に接触しようと奮闘するが間に合わない。
ミンガン・クリーク渡河作戦はやはり無惨な失敗に終わり、春日の危惧は現実のものとなっていた。ようやく現地にたどり着いた角挺身隊を待っていたのは、地獄をくぐり抜けた一握りの生存者に過ぎなかった。その惨状を目の当たりにした角は、さらに救出活動を続行するため、帰還する部隊を清水に託し、ただ一人島に残る決意を固めるのであった。