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里山からの手紙


徳島県勝浦郡上勝町は、勝浦川の上流に位置し、

ブナの森を残す中山間地域。

お年寄りが元気に暮らす町として知られ、

葉っぱビジネス「いろどり」でも全国的に有名だ。

人口約2000人の里山にUターンしたフォトグラファーが、

里山に暮らす人々の「素顔の今」に出会う。



写真・文 中野晃治

●当ウェブページは徳島新聞折り込みの生活情報誌フリーペーパーさららで
2007年から1年間連載されたものに加筆と新たに写真加えたものです。
なお年齢ほかデータは当時のままです。





 



松岡夏子さん(25歳)





未来に、種を蒔く人

 



 


宮崎駿監督の映画「風の谷のナウシカ」。

なっちゃんがその主人公に

二重写しになって見えるのは私だけだろうか


上勝町では

町民自らごみを
34分別し、

80%
のリサイクル率を遂げ、

資源として再び息を吹き返している。



その活動母体が「NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー」。

事務局長(現在は理事として活躍中)を務めるのが、

兵庫県西宮市出身のなっちゃんだ。



19
歳の時、神戸大学在学中に受けた講義がきっかけで

ごみ問題を考え始め、日本各地の現場を回った。


「でもそこの地域の者でない私に何ができるのだろう?」。


視野を広げるために

環境先進国デンマークに1年間留学。

滞在中、上勝町のごみ政策を知り、

応募したのが縁で移住した。



「上勝では教えてもらうことばかり。

都会では農業を頭で理解してても、

食べ物はスーパーで買うから過程が見えへん。

ごみも一緒で決められた時間に出しておけば、

あとは税金で処理してくれるし。西宮に住んでいたら見えんかった」と

まっすぐな瞳で語る。




現在、事務局もあり、管理を任されているのが

「上勝町介護予防活動センターひだまり」。

中に入ると、不用品をリメイクした愉しい商品が並ぶ。

そのきっかけとなったのがもともと「ひだまり」で活躍していた

リメイクの達人・清井さんとの出会いだった。



「これで何かできませんかねえ?」。

なっちゃんが見せたのは

毎年、上勝の月ケ谷温泉で開催している

彩恋こい鯉まつり(使わなくなった鯉のぼりを全国公募)で活用し、

その後穴あきなどで吊れなくなった鯉のぼりの山だった。

「ほな、ナップサックでも作るで?」清井さんが瞬時にひらめいた。

これが予想外の展開を生むことに。

新聞に掲載されるや1日に何件と注文が来て

「事務所がびっくりしたわな」とは清井さん。

「だんだん鯉のぼりが貴重になってきたんよ(笑)」と

なっちゃんが嬉しそうに回想する。

やがて鯉のぼりやデニム素材のエプロンにバッグ、

ついには浴衣地を再利用したふんどしも誕生し、人気商品に。

「くるくる工房」の誕生である。




また招かれた授業で「使える物がどんどん捨てられていく」現状を話すと、

地元小学生も立ち上がった。

ゴミステーション内の建物の一角を掃除し、不用品を整理。

お持ち帰り自由の「くるくるショップ」をオープンさせた。

「分別するだけだった場所が、

楽しみを感じてもらえる拠点になった」と喜ぶ。


ちなみに2007年8月1日〜同年12月27日の集計で、

くるくるショップには約1.5トンの持ち込みがあり、

そのうち約1トンがお持ち帰りされ、

有効活用された。



が、町で住み始めた当初は

「地元の人がごみ政策をどう感じているのか」実際は不安だったという。

町の現状を「しっかり見て行きたいと思ったから、

地域の飲み会に出掛けた」と当時を思い出す。

3年経た今や「なっちゃん、なっちゃん」と何かにつけてひっぱりだこだ。

町内の祭りでは司会や裏方もこなし、大活躍。

「丸一日休めるんは、月に1日程度」だが、

いつも前向きに笑顔を忘れない。




「上勝の人はほんま生き生きしてるわ(笑)」とにこにこする。

「ごみの分別では、都会のように最新の技術がなくても、

人が出来ることを最大限にしている」。

そんな思いを胸に、事務局発行の小冊子「くるくる」では

昔ながらの里山の暮らしを通じて感じた
資源循環の知恵を全国に伝える。

また多忙な合間を縫っては日本各地の講演先に訪れ、



「飲み物ひとつとっても10種類ほどの分別が必要」な現実を取り上げ、

「単にリサイクル率を上げるだけでは変わらない。

日本全体でごみになった時のことを考えた物作りをしませんか」と

呼びかける。

その情熱の根底にあるのが

「なっちゃん!」といつも声掛けてくれる

地元の人達の笑顔なのだろう。



休日。しかも夕刻だというのに、

「くるくるショップ」でひとり不用品を整理する

なっちゃんの姿があった。


「そこの地域の者でない、私に何ができるだろう?」。


19
歳の時感じた想いは

いろんな所から芽を出し、今や、なっちゃん自身が

僕ら町民の夢のつぼみになり始めている。

 



※なっちゃんは2008年事務局を離れ、

現在はゼロ・ウェイストアカデミーの理事として

また全国各地で講演活動等を行ってくれています!

 



●ゼロ・ウェイストとはごみだけでなく、無駄や浪費をなくすという意味です

 

 




未来に、種を蒔く人


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