もしも五色台が犬たちの楽園なら・・



3月10日
 眠れぬままにキーボードに向かい、見果てぬ夢をラ・マンチ
ャの男の如く見続けています。

 鴬が早い春の訪れを心地よく告げ、雛鳥を従えた雉鳩が道路
を悠々と横切り、松の緑が新しい淡い緑に変わろうと風の中で
揺らめき、青く澄み渡った空と深い緑の海の色の真ん中で親子
の野良たち一家が食後の散歩を楽しんでいる。

 色を失っていた芝生の所々からクロバーの葉が顔をのぞかせ、
午後の緩やかな陽差しが雌雄の犬の背を暖かく照らし、従う子
供たちに優しい温かさを投げかけている。

 芝生広場のそこここに陣取り、春の香りを楽しんでいる人々
の間を家族の犬たちがゆっくりと徘徊し、ある者はお弁当のお
すそ分けに預かり、またある者は優しい愛撫の中に身を委ねる。
ねぇー、ベンおじさん!
 仔犬たちは騒々しく人々の周りを走り抜け、甘えた仕草で愛
情を溢れるほどに身に受ける。野生児たちが存在し、その優し
く愛くるしい啼き声があふれることで自然の色が広がる。

 風と共に生きる野生児たちが周囲の人々を取り込みながら
 優しさの漂う絵画を創りあげていく・・・・・


  風が鳴き、鳥がさえずり、花々が甘い香りを漂わせ、
  そして、全てを陽光が優しく包む。
 集うものすべてが生きることを謳歌し、生きることの歓びに
輝き、寄り添うものたちをよりいきいきと活かし続けている。
生きとし生けるもの全てに陽は輝き、命の歓びを吹き込む。


 時折天空より舞い降りてくる白衣の使者が、集う者全てに
 渇きを癒す命の水を与え、優しさの限りなくつづく夢を手
 渡す。

 時は止まり、ただ風の音だけが静かに通り過ぎて行く・・・

     −Don Quixote de la Goshikidai−